写真家・POLEPOLE TOCHAM
「WE ARE ALIVE UNDER THE SKY — 生きている この空の下」展@ギャラリー悠
どこまでも広大な空と原色の服を着た人々、限りなく続く青い空と大きな瞳でまっすぐレンズをのぞく子供——。写真家・五味宏基氏の個展「WE ARE ALIVE UNDER THE SKY — 生きている この空の下」で展示されている作品は、空と人物や、空と動植物などの二枚一組で構成されている。それらは、地球上どこでも間違いなく続いている空の下で生きる命を、鮮やかに写し出している。
元新聞記者カメラマンである五味氏は、2008年8月から2011年8月までの3年間、アフリカのタンザニア連合共和国で氏の妻と3人の子供と暮らした経歴を持つ。その地で五味氏は、妻と子供たちのサポートをしながら写真を撮り続けた。今回の個展は、その3年間のタンザニア生活の中で撮り貯めた写真を人々に見てもらいたいとの思いから開催に至った。
「日本と同じ空と分かりつつ、タンザニアの空は"すごい空"だった」と五味氏は話す。日本にいた頃は空を意識することはなかったと言う五味氏。「空はどこまでも繋がっていて、空の下で人々は泣いたり笑ったりしていくんだなと、改めて認識した。タンザニアの人々はそういうことを分かりやすく表す人たちだった。花も色もみんな分かりやすい」。原色で溢れるタンザニアの人々や自然から五味氏が学んだことだった。
学生の頃の五味氏は、「写真は嘘をつく」と考えていたという。マスメディアが"作った"写真を信じることに否定的だった。しかし次第に、自らが新聞社の記者カメラマンとして働くうちに学生時代とは反対のことも考えるようになったという。イラクでの戦場取材の経験も持つ五味氏は当時、「写真で戦争を止められるんじゃないか。何かできるんじゃないかと思った」と話す。
しかし、「写真を撮るということ」を自問し続けた五味氏は現在、「考えない」ようにしていると話す。「考えることは悪くないと思うけれど、撮らなきゃ始まらない」。撮りたい物を撮り、その時感じた気持ちを表現する。だから五味氏の写真には、迷いも押しつけもない。五味氏という一人の人間を通して見た世界、ただそれだけ。
今回の展示のテーマは、「生きている この空の下」。2011年3月11日に起きた東日本大震災のニュースをタンザニアで知った五味氏は、何もできない自分にもどかしさを感じたという。しかし、そのとき地球の裏側で見上げた空は「日本と繋がっている」と感じたという。「みんなこの空の下で生きている。生きていれば嫌なこともあるけれどいいこともある。生きていればどうにかなる」
五味氏は自身のブログでメッセージを配信することを思いついた。子どもの通うインターナショナルスクールの協力を得て、そこに通うさまざまな国の生徒などのメッセージを写真で毎日1枚ずつ配信し始めたのだ。「自己満足だとも思った。それでも何かしたかった」と五味氏は話す。日本へのエールは、一時期の抜けはあるものの、震災直後から76日もの間続けられた。
貧困、食糧不足、AIDS、紛争などの困難を抱えるタンザニア。しかしそこで暮らした五味氏が震災後の日本に届けようと思ったものは「はじけるような子どもたちの笑顔」や「陽気な踊りと音楽」、「手つかずの自然」などのむき出しの命だった。そして、そんなすべての命の上に等しく広がる「空」。これらの写真から感じたことはただ一つ、澄み切った「祈り」だけだった。
「WE ARE ALIVE UNDER THE SKY — 生きている この空の下」展詳細案内
- 日時:2011年11月10日~15日
- 営業時間:10:00〜19:00(最終日は17:00まで)
- 場所:ギャラリー悠 (ギャラリーユウ)
- 住所:〒180-0006 東京都武蔵野市中町3-25-15
プロフィール
五味宏基
新聞社での記者カメラマンを経た後、2008年8月~2011年8月までの3年間をアフリカのタンザニア連合共和国で生活。現在はフリーの写真家として活動している。