画家 若松 武史(わかまつ たけし)
若松武史展『血と肉の起源』@ギャラリーFace to Face
寺山修司率いる演劇実験室・天井桟敷の中心的俳優として活躍し、その後も舞台やテレビ、映画などで幅広く活躍する俳優・若松武史氏。
そんな若松氏のもう一つの顔が画家・若松武史だ。若松氏が生涯追い続けてきたテーマとは何か。そして、俳優でもある彼が造り出す平面の上の舞台とは?
人間のような表情で奇妙に笑う犬、涙を流しつつ笑顔で魚を突く奇怪なキャラクター……。嫌悪感を抱きつつ、しかし決して目を離すことのできない原色の世界。それが、俳優であり画家である若松武史氏の造り出す世界だ。
井の頭公園の近くにあるギャラリーFace to Face(武蔵野市吉祥寺南町2)で、9月3日から(25日まで)若松武史展『血と肉の起源』が開催されている。若松武史氏は1950年東京都生まれ。日本大学芸術 学部美術学科油絵コース中退した後、1974年、寺山修司主宰の「演劇実験室・天井桟敷」に参加。後期の中心的メンバーで、劇団解散後も俳優として舞台、テレビ、映画等で活動を続けている。
その一方で若松氏は夢を実現させ、2008年より画家としての活動を開始した。若松氏の作品についてギャラリー代表の山本清氏は、「あふれる色彩と寓話的要素に満ちた画面は祝祭的で、その中に登場する人物、動物達はある種演劇的な振る舞いを見せながら私たち鑑賞者をその世界に巻き込んでいくエネルギーを持っています。」と話す。
若松氏が演劇と絵画どちらにも共通して興味を持ち続けてきたテーマがエロティシズム、つまり人間の根源的な「生きる欲」だ。食べること、味わうこと、それは同時に他の生命の命を奪うことでもある。欲望があるからこそ実感する「生きている」という感覚、残酷さの裏に ある快楽、人間が生きる上で目を背けることのできない自然の摂理を描く世界。そうした人間に備わった生臭いエネルギーを若松氏の作品は放っており、それが鑑賞者に「目を背けたくても見てしまう」という矛盾した状況と、胸の中をかき乱されるような感情の揺さぶりを与えるのだ。
若松氏は、「演劇も絵画も本質は同じ」だと言う。「自分の中に溜まっているものを外に出すという点では同じです。違うのは、演劇は共同作業だけれど絵は一人で描けるというところ。しかし結局は、自分自身の発見であり出会いなんです。色々な人物を演じることで発見する自分だったり、無意識に絵を描いているうちに発見する自分の深層心理だったり。人は変化するものですし、人間の不思議さに興味があるんです。」
さらに若松氏はこう続ける。「抑圧を取り払って限りなく自由になるということは芸術全体における最終目標だと思います。教わるものではないし、こうでなくてはいけないということもない。晩年になって子供ようような絵を描けるようになったピカソはきっと自由になれたのでしょうね」
「生きる」ということ、そして「魂の解放」。それらはどちらも人間の「本能」へ結びつく。その本能を若松氏はあるがままに観察し、受け入れ、表現を通じて解き放つ。その解き放つとき生じる若松氏のエネルギーに圧倒されつつも、観客たちは自分の内なる発見に気づき、驚くだろう。
プロフィール
若松武史(Takeshi Wakamatsu)
1950年7月2日生まれ、東京都出身。
1974年~1983年まで、故寺山修司率いる『演劇実験室◎天井桟敷』に所属。
以降も舞台、映画、ドラマなどで活躍中。
2008年から画家としての活動を開始。
若松武史展 『血と肉の起源』詳細案内
- 日時:9月3日(土)~25日(日)
- 営業時間:13時~19時
- 定休日:月・火休み ※9/19(月)は開廊
- 場所:Gallery Face to Face
- 住所:〒180-0003 〒180-0003 東京都武蔵野市吉祥寺南町1-18-8-101
出演予告
舞台『引き際』(作・演出:天願大介) |
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映画『天使突抜六丁目』(山田雅史監督) |