シルクスクリーン 望月厚介(もちづき こうすけ)
「望月厚介『MELTING(溶融)』」@ギャラリーボンブラ
吉祥寺のギャラリーボンブラ(武蔵野市吉祥寺北町1)で望月厚介氏の個展『MELTING(溶融)』が開催されている。
2010年、ニューヨークで発表した作品『A POOL OF MELT DOWN』からの流れを汲んだ小品9点を展示。タイトルとなっている『MELTING』は溶融という意味の他に、"結末のわからない"という意味がある。これは今回の作品から、はっきりとした形が現れるのか、それともこのままの状態が続くのか、作者本人にも"未だその結末が分からない"という考えから名づけられた。
望月氏は、1948年静岡県生まれ。元々アートが好きだったというが、本格的に作家として活動しだしたのは40歳を過ぎてから。「1990年頃から人の展覧会を観てもあまり面白いと感じるものがなくなってきて。それなら自分で描こう」そう思ったのが活動のきっかけだったという。
今個展の作品は、どれも黒背景にインパクトのある朱色が映え、見る者を圧倒させる。これは、平ら場所でなければ綺麗に刷れないシルクスクリーンを、あえて凸凹な場所で刷ることによって偶然性を持たせているが、まるで観る者だけでなく作者本人も楽しんでいるかのようである。
以前の作品は、社会に対して批判的でアイロニカルなものが目立っていたが、それが時代における一過性なものだと気づき、もっと普遍的なものが作れないかと試行錯誤して現在の表現方法にたどり着いた。
そして、印象的な黒色。これも、様々な色を使っているうちに行きついた最終形だという。「黒は、ありとあらゆる色を内包しています。3原色である赤、青、黄を塗った上で、さらに黒を塗ることで、ただの黒ではないことを表現しています」と望月氏。確かに色を重ねた黒は、より深みのある黒という印象を受ける。
「決して繰り返したくない。新しいものの方が作っていてワクワクする。だから今後も変わっていくんだと思います。」時代を様々な色で重ね、現在を深みのある黒で表現した望月氏。
ぜひ会場で生で観覧し、作品の結末を各々で見つけてもらいたい。
展示は今月28日迄。
8月31日からは「横浜 岩崎ミュージアム」にて今回の作品とも繋がる3メートルの大作が展示される予定。
「望月厚介『MELTING(溶融)』」詳細案内
- 日時:2011年8月5(金)〜8月28日(日)
- ウィンドウ展示:夜間照明により終日鑑賞可
- ギャラリー展示:金・土・日曜日の13:00〜19:00
- 場所:ギャラリーボンブラ
- 住所:〒180-0001 東京都武蔵野市吉祥寺北町1-2-11
プロフィール
- 望月 厚介(Kosuke Mochizuki)
- 1992年 第3回 TAMA うるおい大賞美術展(92年審査員奨励賞95年大賞受賞 多摩市・東京)
- 1993年 TAEJON 万国博93 招待出品 国際版画・素描展(テジョン・韓国)
- 1995年NICAF 95国際コンテンポラリーアートフェスティバル(パシフィコ横浜・横浜)
- 1996年 第3回さっぽろ国際版画ビエンナーレ(北海道立近代美術館・札幌)
- 1998年 個展「残された領域」六花亭ギャラリー企画(北海道・帯広)他
第7回バルナ国際版画ビエンナーレ(バルナ美術館・ブルガリア) - 1999年 第1回 トロワリビエール国際版画ビエンナーレ(ケベック・カナダ)
エジプト国際版画トリエンナーレ(~02年) (カイロ美術館・エジプト) - 2000年「日本―現代のヴィジョン」展招待出品(スルメールミュゼ・南フランス)
「アジアン・アートナウ」ラスベガスアートミュージアム(ネバダ・USA) - 2002~11年 高知国際版画トリエンナーレ(井野町紙の博物館・高知)
- 2003年 第7回 ハンガリー国際版画ビエンナーレ招待出品(ハンガリー美術館巡回展)
第12回 ソウル国際版画ビエンナーレ(スペースソウル・韓国) - 2004~05年 CIGE 中国國際画廊博覧会(北京・中国)
- 2005~07年 SIPA ソウル国際版画アートフェア―(ソウルハンガラム美術館・韓国
- 2009年「2009 BAIJING SOGO 国際アートフェア―」(北京 SOGOデパート・中国)
「IMPRINT」Contemporary Graphic Art Collection(マガシネット・スウェーデン) - 2010年 個展「在ること・無いこと」ギャラリーQコンセプト(銀座・東京)
NY 国際美術展 大賞受賞(NY Cooギャラリー・USA) - 2011年「望月厚介」個展 羽村市ゆとろぎ美術館(羽村市・東京)
主な収蔵先
町田国際版画美術館、エジプトカイロ美術館、東京多摩市、川越美術館、六花亭製菓株式会社、東京羽村市松林小学校 他