作家 藤田道子(ふじた みちこ)
「藤田道子 きみのこえにみみをすます 展」@Gallery 惺 SATORU
現代美術を企画展示する吉祥寺のギャラリー、Gallery 惺 SATORU(武蔵野市御殿山1)で「藤田道子 きみのこえにみみをすます 展」が7/7(木)~31(日)まで開催されている。
身近に起こる自然現象から受け取る感覚を作品として表現する作家、藤田道子さん。惺での2回目となる個展について藤田さん本人に話を伺った。
藤田さんは東京造形大学に入学し、美術学部絵画専攻版表現コースを選択。理由は、版画は版を通すことで、思いがけない偶然が紙や布の上で生まれていくことが新鮮だったからだという。また、油画などよりも作品と自分との距離感が合っていたこともあるそうだ。
その後、均一的でシャープな表現に適した版種であるシルクスクリーンに技法を絞ると、原画を作る際に生まれる筆圧による抑揚が製版段階で消え、ニュートラルな表現に生まれ変わった。
「無機質な表面の作品を作ることが心地よく響いたんです。今思うと、シリアスだったり、湿った感じからより離れた表現として、無意識に選んでいたのかな」そう語る藤田さん。大学での経験が作家活動の基盤となっている。
藤田さんの作品はいつも、"その時に作りたいもの"という感情に素直に従って作品を生み出している。しかし、一貫してこだわっているものもある。それは、"身の回りに起こるささやかな自然現象から受ける感覚を作品に投影すること"だ。
「瞬きや呼吸といった無意識に行っている行為や、涙が出てくる不思議さ、手の造形、まつ毛の美しさ、といったような自分自身の体から感じる不思議さや、咲き終わった花の姿、影が伸びていく様、埃が舞い散る様、鏡に映る世界、などといった身近でありながらファンタジーを感じるものからインスピレーションを感じることが多いです。」
今回の個展のテーマ"きみのこえにみみをすます"に関して藤田さんは言う。 「誰にでも好きな声、心地よい声ってあると思うんです。私にとってそんな声が、雑踏の中、突然聞こえてきて。そこから、声について考えるようになってイメージがどんどん膨らんでいったんです。声の持つ力と、その声を受け取る側の力。ふたつの関係性の面白さを思いながら作りました。また同時に内側の心の声についても、年を重ねていくごとに大切にしなければならないと思うようになり、タイトルの『きみ』の部分には、自分と他者、両方の意味を込めました」
今個展で表現されているのは、紙や鏡、そしてガラスを使った版画、そしてドローイングやインスタレーション作品などである。どの作品もプリミティブな印象を受け、ふと耳を澄ますと作品から声が聞こえてきそうな印象を受けた。「今後も作品は今よりクリアに、簡潔になっていくように探求していきたい」と語っていた藤田さん。是非、シンプルながらも奥深い藤田作品をGallery 惺 SATORUで堪能して欲しい。
藤田道子「きみのこえにみみをすます展」詳細案内
- 日時:7月7日(木)~7月31日(日)
- 営業時間:11時〜19時
- 定休日:火曜・水曜日 *祝日オープン
- 場所:Gallery惺SATORU
- 住所:〒180-0005 東京都武蔵野市御殿山1-2-6 VIEWCANYON吉祥寺御殿山 B1F
藤田道子 プロフィール
1980 生まれ
2003 東京造形大学美術学部絵画専攻版表現 卒業
2004 東京造形大学美術学部絵画専攻版表現 研究生修了
Solo Exhibitions
2002 瞬きのリズム 東京造形大学内 ギャラリーnode
2003 藤田道子展 ギャラリーエス
2006 右から光り ギャラリーエス
2009 虹になる Gallery惺SATORU
Kyoju to Joshu Gallery惺SATORU
2011 藤田道子展 ギャラリーゴトウ
Selected Group Exhibitions
2001 六月の現状展 小野画廊II
2002 入る出る 東京造形大学内
2004 乙女会議 ギャラリーエス
2005 まぼろし同士 ギャラリーアルテリア
2006 アトリエ展 スタジオCo
2009 TCAF2009(東京美術倶楽部)
2010 FLOWERS Gallery惺SATORU
「色考|白」Gallery惺SATORU
2011 行商~ギャラリーサーカス(スパイラルガーデン/Gallery惺SATORU)