野上さやか(のがみさやか)
「たいせつなもの展」野上さやか @ギャラリー サテンドール
四角く切られた小さな紙がいくつも並べられ、黄色や青の線をキャンバス上に作る。 きらきらと輝くこの抽象画のタイトルは「キレイな石」。「たいせつなもの」というテーマに作家・野上さやか氏が選んだ「キレイな石」の意味するものとは?
2011年6月3日から6月19日まで、ギャラリーサテンドールで「たいせつなもの展」が開催されている。作家の野上氏は、「たいせつなもの」というテーマから「キレイな石」を連想した理由について次のように話す。「石なんてどこにでもあります。でもそんなどこにでもある石に何らかの"感情"が加わってその石が大切に思えたとき、その石はキレイに見えるんです。その瞬間の"感動"を視覚的なイメージにして表現しました」
彼女は「キレイな石」の他にも、「砂」や「太陽」などの抽象的な作品を多数描いている。普段から、砂や泥、汚れた川など、決して美しいとは思えないものが、ある時突然、美しく見えると語る。その明確な因果関係は本人にもまだよくわからないそうだが、幼いころの遠い記憶や、その時の気分など、意識に上らない何かしらの感情が突如、対象物に美をもたらす。
だから彼女は対象物自体の美しさを描くのではなく、その対象物を「美しい」と感じた瞬間に受けた"印象"を再現する。そしてその美しいと"印象"をもたらすものが、自分の中にある"感情"なのだ。さらに野上氏は、「その"感動"が個人的な思い出や喜怒哀楽だけにならないように意識しながら描く」と話す。「自分の気持ちをぶつけすぎると、あまりにも個人的で、他人を寄せ付けない絵になってしまいます。それでは肝心の伝えたい"感動"が伝わらない。だから個人的な感情をあえて取り去ろうとしているんです」
つまり彼女の試みは、「印象」から「感情、自我」を取り去り、「純粋な印象の再現」をしているという哲学的なものなのだ。「今後も研究を続けて、絵で人に何かを伝えていきたい。まだまだ研究途中です」と話す野上氏。今回の「大切なものとは?」との問いに導き出した回答が「キレイな石」だった。「道端の石が美しい」 というひとつの答えは、現在の彼女自身の哲学であるようだ。
「たいせつなもの展」詳細案内
『 ふるさと こころ いのち 』 に因んだ 作品20点。
抽象・具象・版画など様々な作品が一挙に並ぶ。
作家一覧:桐生照子、後藤 弘、北原かずこ、郡 慧子、深田絵理、小祝嘉一郎、平野信一、大場正男、野上さやか、菅野瑠衣(順不同)
- 日時:2011年6月3日(金)~19日(日)
- 営業時間:12:00 ~18:00
- 営業日:毎週 金曜日、土曜日、日曜日
- 場所:Gallery サテンドール(ギャラリーサテンドール)
- 住所:〒180-0003 東京都武蔵野市吉祥寺南町2-13-4-103