写真 出店 久夫(でみせ ひさお)
「出店久夫 ー写真画考-」@SOH GALLERY K3
一見すると、デジタル合成された写真のようであるが、実は一切PCソフトなどは使用していない。どの作品も写真撮影したものをプリントし、コラージュ。そして、それをまた写真に撮り、コラージュ…。延々とその作業を繰り返し、1枚の作品が生まれているのだ。
作者である出店久夫氏は、写真撮影からプリント、加工、そしてコラージュまでの一切の作業工程を自らの手で行っている。
そんな出店氏の個展が現在、吉祥寺SOH GALLERY K3で現在開催されている。
出店氏は1945年生まれ。戦後直後の時代、物事の基準が180度変わっていく日本を見て育ち、常に不安感を抱いていたという。 「生まれが戦後とはいえ、過ごした街や育ててくれた親には、まだ鮮明に戦争の記憶がありましたからね。今現在でも私の中には内面に潜んでいる不安感があって、それが私の作品のテーマになっていると思っています。」
そう語る出店氏だが、以前は油画を主体として作品制作を行っていた。 「コラージュは下絵を描く際に使っていたんですけどね。いつの間にか、コラージュの方がメインになってしまって。撮影、プリント、加工、そしてコラージュという一連の作業を繰り返していくうちに、気づいたら必然的に画面が生まれていました。今では見て頂く方以上に、私自身も作品作りを楽しんでいる気がします(笑)」
これまで、カラー作品も多く描いてきた出店氏だが、今回はモノクロ作品が中心に並んでいる。「SOH GALLERY K3さんは、写真家の作品に対して鋭い目を持たれていて、とても魅力的な写真家の展覧会を開催しておられますからね。私自身は純粋な写真ではないですけど、写真を使用している作家として、有難いことに目をかけて頂きましたから。一度、この場所で展覧会をする意味を自分に問いたいと思ったんです。」
出店氏が語るように、作品はほぼモノクロであるためか、シンプルで、写真の強さが際立っているように感じる。 そして、デジタルには決して表現が不可能である"ざらっとした質感"。作品を生で体験することで、やっぱりこれが手作業なんだと再認識することが出来た。 展覧会は今月26日(日)まで。 ぜひ観る人各々が、それぞれ画面を読み解く楽しさを味わってほしい。
「出店久夫 ー写真画考-」詳細案内
- 日時:2011年6月3日(金)~26日(日)
- 営業時間:11:00~19:00
- 定休日:月曜日、火曜日
- 場所:SOH GALLERY K3
- 住所:〒180-0001 東京都武蔵野市吉祥寺北町1-2-9
プロフィール
- 出店 久夫(Hisao Demise)
- 1945年 福井県生まれ
- 1966年 京都市立日吉ヶ丘高校美術コース西洋学科卒業
- 1985年 第17回現代日本美術展に出品、(以後同展にて)89年佳作賞、92・97・00年美術館賞
- 1986年 第16回日本国際美術展に出品 88年美術館賞
- 1987年 第9回エンバ賞美術展にて新人賞、88年優秀賞 90年大賞
- 1989年 第3回和歌山版画ビエンナーレ展に出品 個展
- 1991年 第19回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ招待出品(93・95)
- 1992年 個展(愛宕山画廊)
- 1993年 アートは楽しい4(ハラミュージアムアーク)出品
- 1995年 ザ・版画 ―刻まれた現代史―世界の版画・戦後50年展に新作依頼出品
- 1996年 第3回さっぽろ国際現代版画ビエンナーレ(00)
- 1997年 個展(あーとらんどギャラリー/丸亀市)
- 1998年 神奈川国際版画トリエンナーレ98に出品
- 2000年 二千年國際版畫邀請展に出品(国立台湾藝術教育館/中国)
Y2K国際版画展横浜展に出品 個展
パブリックコレクション
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