ペン画と創作絵本画家 ソウガ・イマムラ(そうが いまむら)
「ペン画と創作絵本画家 ソウガ・イマムラ展」@ART in TOKYO
遠い世界の果てで孤高に佇む少女ーー。淡くどこか物悲しいこのファンタジックなイラストは、元々ワインボトルが詰められていた段ボールの底をキャンバスにして描かれた作品だ。作品にはワインの瓶底の跡と、ところどころにシミが付いていて、それが独特の世界観に陰影を付ける。作者は山梨のワイナリーで醸造も手がけている、ペン画家であり創作絵本作家でもあるソウガ・イマムラ氏。段ボールに描かれた不思議な世界とその魅力に迫る。
画材ショップ、ART in TOKYO(アートイントウキョウ)の2階ギャラリースペースで2011年5月23日から一風変わった個展が開催された。作品は段ボールに鉛筆で描かれたイラストや未完成のペン画、廃材や流木を使用した立体作品など。イラストも額に飾る代わりに、麻布とタコ糸で縁取られている。
作者のソウガ・イマムラ氏は、幼い頃から絵を描くことが好きで、高校でも美術部に所属。ある時、美術部の先生に銅版画の画集を見せられて魅了された。特に、線描を腐食させるエッチング技法を好んでいたのだが、それをあえてペンだけでどこまで表現できるか挑戦してみたいと思い、大学卒業後にペン画家として活動を始める。同時に絵本の創作も手がけ、数々の個展やイベントに参加し活動の幅を広げていた。
ところがある日、個展に来たNPOの職員と話しているうちに、「軽い調子で『アフリカ行く?』と持ちかけられたんです。元々アフリカに興味を持っていたこともあり、その場のノリで『行く!』みたいな感じで決まりました(笑)。」そして2006年から1年間、小学生の息子と妻の家族3人で、電気も水道もないタンザニアの田舎のムタクジャ村に移住、稲作の指導などの活動をした。
タンザニア滞在中にイマムラ氏は貴重な経験をしたと言う。「ムタクジャ村には『影絵』という遊びがありませんでした。ある日、夕日で犬や鳩の影絵を作ったら子供たちが大喜びしたんです。それを見て私も感動しました。お金をかけなくても感動を与えられるということに改めて気づいたのです」
子供の頃、決して裕福ではなかったイマムラ氏は、空き箱の余白を利用して絵を描いて遊んだという。「お金をかけなくてもアートはできる」というテーマを一貫して持ち続けた。「"お金"ではなく、"想像力"を使うことにこそアートの醍醐味がある」とイマムラ氏は話す。だからこそあえて素材は普段使う段ボールや廃材を利用した。またイマムラ氏の作品は、1枚の絵の中にストーリーを感じさせる不可思議な世界が描かれている。しかし実際には、物語の1場面ではないという。「見る人が例えば、描かれた人物の名前や人物像、どういうシチュエーションかなどを考えて、イマジネーションを使ってくれたら嬉しい」とイマムラ氏は話す。
実際に、イマムラ氏の作品は見る度に毎回異なる印象を与える。白黒のペン画が立体的に浮き上がり、カラフルに見えるような錯覚に陥る。はたまた眺めるうちに、物足りなさや心細さ、懐かしさ、安堵、怖さなど説明できない数々の感覚が胸を突く。彼の作品は、そこに見る者の想像力を足すことで完結するのかもしれない。
「ソウガ・イマムラ 個展」詳細案内
- 日時:2011年5月23日(月)~30日(月)
- 営業時間:11:00~20:00
- 定休日:水曜日、日曜日
- 場所:ART in TOKYO (アートイントウキョウ)
- 住所:〒180-0003 東京都武蔵野市吉祥寺南町2-8-9
プロフィール
- ソウガ・イマムラ(Souga Imamura)
- 1972年 熊本に生まれる
- 2001年 「晴れし屋」(熊本県熊本市)
- 2003年 「ブリランテ」(熊本県熊本市)
- 2004年 「青い理髪館」(長崎県島原市)
- 2005年 「ブリランテ」「茂」(熊本県)
- 2006年 「たまや」「阿蘇絵本の国」「大津町立図書館」「白水美術館」「絵本の店エルマー」(福岡県)「県立王名高等学校」東アフリカ・タンザニアへ一家移住、「西日本新聞」にて「タンザニア通信」連載
- 2008年 帰国し、山梨県へ引っ越す
- 2009年 「天草屋敷」、「河口湖美術館」にて作品販売
- 2010年 「森の中の絵本館」(山中湖)
- 2011年 「ART in TOKYO」(武蔵野市吉祥寺)