西 則忠+西 由希(Rug Time)
展覧会レポート 「シルクロード・草木染めキリムと赤い衣」@ギャラリー悠
遠い異国を旅する遊牧民の生活から生まれた織物「キリム」。
大地と草木から生まれる素朴な色が美しい幾何学模様となる。祈りを込めて織り込まれた文様は、時代と国を越えても今なお語り継がれる。
- 期間:2011年4月14日(木)〜19日(火)
- キリム織り体験:初日、最終日を除く毎日開催(10:00〜12:00)
- 費用:3000円(材料費、飲み物、トルコのお菓子付き)
- 主催:西 則忠+西 由希(Rug Time)
トルコ直輸入のキリムや絨毯、雑貨の展示販売、キリム織り体験も
吉祥寺の閑静な住宅地にあるギャラリー悠で4月14日から5日間、「シルクロード・草木染めキリムと赤い衣」展が開催される。トルコより直輸入したキリムや絨毯、カスピ海に面するトルクメニスタンから輸入した絹の衣服などが展示販売される。またキリム織りを体験できるワークショップも開催されるので、実際に伝統工芸の技術を学ぶこともできる。
そもそもキリムは、西アジアの遊牧民族の暮らしから生まれた実用的な織物だ。その歴史は絨毯よりも古いと言われている。キリムは家畜と共に移動する彼らにはなくてはならない生活用具であった。テント内の敷物だけではなく、間仕切りやクッション、塩や穀物の収納袋、赤ちゃんのゆりかご、布団や衣類の収納箱など様々な用途に用いられる。また実用品であると同時に、暮らしに彩りを添える装飾品でもあった。
キリムの素材には主に羊や山羊、馬、ラクダなどの家畜の毛を用いる。毛を紡ぎ、草木などの染料で染め、織っていく。絨毯がパイル織りで厚みがあるのに対し、キリムは平織りなので薄手になる。使うのは、縦糸を固定する枠と、織りの隙間を埋めるために糸をたたくキルキットと呼ばれる金属製の小さな熊手のような道具のみ。身近にあり自然な素材だけでシンプルに作るのがキリムの特徴でもある。
今回の「シルクロード・草木染めキリムと赤い衣」の主催者であり、キリム織り職人でもある西 由希さんは、キリムの魅力に取り憑かれたひとりだ。西さんは、トルコ旅行をきっかけに日本に戻ってから絨毯屋で働き始めた。ある日アンティークのキリムを織って修理するのを見て、「自分でも織ってみたい」と思い立った。単身トルコに渡り、今では伝統工芸となったキリムの技術が残る田舎の集落に通いつめた。2年間トルコで暮らしながら、キリムの技術を体得し、歴史や模様の意味を肌で知った。
「女の子の花嫁道具でもあったキリムの模様にはそれぞれ意味があるんです」と西さんは話す。例えば、星の模様は「幸福と豊穣」、髪飾りは「よき結婚への願い」、手を腰に置いた女性は「子孫繁栄」、狼の口は「怖い狼を封じ込める」など。それらは装飾という意味を越え、厳しい暮らしから身を守るまじないや願いが込められている。遊牧民の暮らしが生んだキリムの模様。織り継がれてきた意味は今も色あせることはない。
「シルクロード・草木染めキリムと赤い衣」詳細案内
- 日時:2011年4月14日(木)〜19日(火)
- キリム織り体験:初日、最終日を除く毎日開催(10:00〜12:00)
- 場所:ギャラリー悠(ギャラリーユウ)
- 住所:東京都武蔵野市中町3-25-15
次回展覧会予告
- 「草木染キリム展」
- 日時: 2011年5月18日(水)〜23日(月)
- 場所:東京都あきる野市「黒茶屋」内 「ギャラリー糸屋」(茶房糸屋2階)
- ※キリム織りワークショップも開催予定